太陽光発電システムを利用していると、自然災害による被害の心配は色々ありますが、その中の一つに「落雷」があります。太陽光パネルは平地よりも高い屋根の上や、広大な何も無い平地に設置することから、なんとなく「雷が落ちやすそう」と思われがちです。今回は太陽光発電システムの落雷被害についてお話したいと思います。

太陽光発電システムに落雷の可能性はある？

”太陽光発電システムに落雷”というと、太陽光パネルに直接雷が落ちる…ということを想像される方が多いかと思いますが、落雷は「直撃雷」「誘導雷」、2つにわけることができます。

【直撃雷】
直撃雷とは読んで字の如く、配電線や建築物、樹木などに直接雷が落ちることです。雷が直接対象物に当たるので、落雷に遭った物は大きく破損します。

【誘導雷】
誘導雷とは、樹木や避雷針などに落雷して発生した雷サージが、送電線などを伝って建物内に侵入し、被害を引き起こすものです。場合によっては家電や電子機器を故障させることもあります。影響の範囲は広く、数km離れた場所にまで影響が及ぶこともあります。

確かに太陽光パネルに直接落雷したとしたら、パネルは大きく破損するでしょう。しかし落雷被害のほとんどは「誘導雷」によるものなので、”太陽光パネルに直接落雷して壊れる”ということはとても稀と言えます。

落雷が太陽光に与える影響

前述した通り、太陽光発電システムに於ける落雷被害で多いのは「誘導雷」によるものです。具体的にどのような影響があるのでしょうか？

誘導雷による被害で多いのは、パワーコンディショナー（以下：パワコン）の故障です。パワコンは太陽光発電システムの要となる機器です。いくつもの系統と接続があることから、雷サージの侵入経路が複数あり、落雷被害を受けやすくなっています。
パワコンが落雷被害を受けて故障してしまうと、発電・売電ができず、太陽光発電システム全体に影響が出てしまいます。

落雷被害をできるだけ抑えるために

雷は自然現象なので、人間には止めることができません。でもせめて、被害を最小限に抑える対策はとっておきたいものです。

・避雷針の設置
中規模以上の発電所では、直撃雷の対策として避雷針の設置が有効です。野立ての太陽光パネルには確かに落雷することは少ないのですが、それでもゼロとは言えません。避雷針を設置しておけば、避雷針が雷を受け、エネルギーを地中に放出させるので、パネルなどの物理的な破損を防ぐことができます。

・SPDの設置
誘導雷の対策には、SPD（サージ防護デバイス）の設置が有効です。それぞれの雷サージ侵入経路にSPDを設置しておけば、落雷によって過電圧が生じた場合、安全に地面に電流を流して機器を保護することができます。

落雷被害に遭ってしまう前に確認しておきましょう

落雷対策をしていても、残念ながら被害に遭ってしまった場合、機器の修理などが必要になります。全額自費で修理、交換をするとなると数十万円以上の費用がかかることもあります。また、機器が故障している場合は発電・売電ができなくなることもあるので、迅速な対応が必要になります。いざという時に慌てないためにも、事前に下記のことを確認しておきましょう。

・メーカー保証
基本的に太陽光のメーカー保証は自然災害は対象外になっていることが多いですが、メーカーによっては、落雷による機器の故障に対する保証が設けられています。保証内容はメーカーによって異なりますので、契約時に必ず確認しましょう。

・火災保険
「火災が起きた時のため」と思って加入する方が多い火災保険ですが、補償される範囲は火災時だけではありません。落雷、台風、雪などの自然災害による被害の補償もしてくれます。補償の対象を「建物」「家財」としている場合は、太陽光パネルや架台、パワコン、ケーブルなどが補償対象となります。契約内容によって詳細が異なるので、内容を確認したい場合は保険会社に問い合わせてください。

・自然災害補償
落雷によって太陽光の機器が壊れた場合、自然災害補償の対象となります。ただし、自然災害補償は個人で加入するものではなく、販売会社や施工会社が加入するものです。太陽光発電システムを購入する際に、業者が自然災害補償に加入しているかどうかを確認すると良いでしょう。

・万が一の時に対応が早い施工業者を選ぶ
これは落雷被害に限ったことではありませんが、機器故障の際にすぐに対応してくれる、アフターサービスにも力を入れている施工業者を選ぶと、いざという時にも安心です。

まとめ

イメージとは異なり、太陽光パネルに雷が直撃することは非常に稀なことですが、可能性はゼロではありません。そして、誘導雷によって周辺機器に影響が出やすいことから、落雷対策は「直撃雷」「誘導雷」どちらに対してもした方が安心です。
また、万が一落雷被害に遭ってしまった場合に備えて、「どこが何を補償してくれるか」を事前に加入、確認しておくことで、復旧の際の負担を軽くすることができるでしょう。